田中朝絵先生に訊く、「乳がんとは」。

田中朝絵先生は、
日本語が話せるファミリードクターが少ないバンクーバーにおいて、近年は主に日系
人の患者を診察している。また、非営利団体・日加ヘルスケアの設立者のひとりとし
て、数々のセミナーにボランティア講師としても活躍中。

今回は、バンクーバーでファミリードクターとして活躍しながら、日加ヘルスケア
協会でもボランティア活動を続ける田中朝絵先生に、こうした気になる乳がんにつ
いて聞いてみました。

*乳がんを発症しやすい年齢というのはあるのでしょうか。

田中:「表を見ていただいてもわかるのですが、欧米人が閉経後の60 歳、70 歳と
比較的高齢で発症するのに対して、日本女性のピークは40 歳代です。そして、最
近ではさらに若年化して30 代の女性にも多く見つかっています。また、意外と知ら
れていないのですが、第2 のピークが60 歳ぐらいなんですね」

*女性ホルモンが関係する乳がんは、閉経によってエストロゲンの分泌
量が減ることで発症する危険性は低くなるのではないですか。

田中:「閉経後には卵巣からのエストロゲン分泌量は減るのですが、副腎からのアン
ドロゲンという男性ホルモン分泌量が増え、このアンドロゲンは脂肪に含まれるアロ
マターゼという酵素と合わさることで、エストロゲンとなってしまうんですね。つまり、
簡単にいうと、閉経後の肥満は乳がんのリスクを高めます。
 ファミリードクターをしていて、ここ数年、乳がんにかかる日系の方が多いと実感
しています。ひとつの大きな要因は、やはり食生活でしょうね。野菜や魚中心の和
食はカナダではなかなかむずかしく、自然と脂肪や糖分の多い食事になりがちです。
また、タバコ、運動不足、ストレスも乳がんのリスクを招く要因となりますので、禁
煙し、できるだけ歩いたり、ストレス発散に心がけたいものですね」

*そのほかに、普段自分でできる予防法などはありますか。

田中:「毎日できることは、やはり食事に気をつけることと、体を積極的に動かすこ
とですね。それと生理のある方はその前後は避けて、毎月、自分の胸を触ってみる
ことです。普段から自分の胸の感じを知っておくと、何か異物感に触れたときにす
ぐわかります。乳がんにかかった多くの方は自分で見つけているんですよ」

*それで心配になったら、日本でならすぐ病院へ行けますが、カナダで
はファミリードクターがいないと検査にまわしてもらえないのではない
ですか。

田中:「ファミリードクターを持っていない方も結構いらっしゃいますよね。でも、ド
クターの紹介状(リファラル)がなくても、40 歳から74 歳なら無料で、「スクリー
ニング・マンモグラム」検査をご自分で簡単に予約できますよ。ただし、それは今
まで乳がんと診断されたことのない人で、もし、乳がんの疑いがある人や、すでに
乳がんと診断されたことがある人は、「診断マンモグラム」になるので、ドクターの
紹介状が必要になってきます。」

*今年から40 歳代の検査の定義が変わったのですよね。どう受け取れ
ばいいのでしょうか。また、日本人の発症年齢は低いということですが、
30 歳代の心配な人はどうしたらいいでしょうか。

田中:「40 歳代の方は、「スクリーニング・マンモグラム」検査のための紹介状が欲
しいといわれるかもしれませんが、実際の定義は“recommended”なので、必要
ありません。紹介状のことをいわれたら、日本女性の乳がんのピークは40 歳代だと
いってみてください。
 あと、40 歳代でも母親や姉妹が乳がんになったことがある人は、紹介状が欲し
いといわれることはないので、ぜひ、積極的にこの無料検査を受けてくださいね。
 とにかく、しこりなどの異常を見つけたら、すぐにファミリードクターでも、ウォー
クインクリニックでも行くことをおすすめします。そして、若い日本女性は高濃度乳
腺(乳腺組織の量が多く密度が高い)の方も多く、マンモグラムよりも超音波で見
つかることもあるので、マンモの検査で納得がいかない場合は、ドクターに超音波
検査もお願いしたらいいかもしれません。カナダでは30 歳代に限り、まず超音波
で検査し、さらに検査が必要な際はマンモグラムになります。
 もし急を要すようでなければ、日本に帰ったときにマンモグラムと超音波をやって
もらってもいいですね。
 早期に発見されれば、乳がんはとても生存率の高いがんです。こわがらないで、
ぜひ検査を受けてくださいね」

 無料BC キャンサーエージェンシー・スクリーニング・マンモグラム(40 歳〜
74 歳は紹介状なしでOK。75 歳以上の方はドクターに相談してください。)

検査などについて、詳しいことを日本語で知りたい方は以下にご連絡ください。
(留守番電話になっていた場合は、必ず、お電話番号をお残しください。
本名を名乗らなくても大丈夫です)
604-433-7831 
(記事提供 ミネ・ウチダ・ビイラー)

このブログの人気の投稿

乳腺外科医をお迎えしました。

10月は乳がん啓蒙月間!![各種お知らせ有り]

CSLへの登録について。